命売ります

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三島由紀夫が自決した日、われわれ小学生があれこれ言うことは限りなく無に等しかった。この凡な田舎の小学生たちは、まずもって三島由紀夫が誰かなど知るはずもない。その親たちさえ、この出来事を遠い異国の出来事ぐらいに思っていた。しかしあたしは、ひょんな事情からこの日のことを鮮明に覚えている。

その日、クラスでリーダー格のA君が教壇に立って、

ミシマユキオガシンダ

と言った。

ミシマユキオを知ってか知らんでか皆口々にミシマユキオガシンダと言った。

彼が言ったら異口同音に。

A君が生きていたらどんな大人になっていたかと思う。

彼は三島由紀夫自決の一年後破傷風で亡くなった。古釘を踏んだのが感染源になったと聞いた。このA君が我が人生で身近に体験した二人の破傷風のひとりです。

豊饒の海は3年前に読み始めたが、未だ第2巻
で中断したまま。

この度、なんと、三島由紀夫のSF「美しい星」が映画化されたという。ふーん、と思いながら三島のサスペンス「命売ります」を発見。これはおもしろい。スイスイ読めてしまう。

しかしいつか死ぬまでに豊饒の海を読み終わらなくては。その時その時に、A君はどんな大人になっていただろうとまた思うことだろう。