鼻と鼾 ちょっとの違い

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三島由紀夫「命売ります」は気鋭のサスペンスであります。ストーリー全容は言うまでもないが、作中の比喩表現はあまりにも素晴らしく三島の天才ぶりに酔いしれる。そんな天才が言うのだから間違いないこのくだり。

 

 

 

 

 

 

 

 

職業柄、鼾の文字に触覚反応です。あどけない寝顔に食指をそそられた主人公も鼾だけはいただけないそう。

ひとはギャップに閉口する。

それにしてもだ、活字の「鼾」を久しぶりに見た。この漢字には変な思い出がある。研修医のころ、とても風変わりな先輩ドクターが、カルテに「鼻を擤む」と漢字で書いたのを見たあたしは、擤むという字を初めて知って、「すごい!センセ!擤むって手へんに鼻とかくんですね!と感動して叫んだ。と、その先生、「ちがいますよ。鼻は突き抜けてるけど、擤むの手へんの横の字は突き抜けてませんから」と言うのです。「鼾という字の鼻も突き抜けてませんよ」

ほんまや〜。

三島さん、知ってました?

当たり前でしょ、天才なんだから。