わしら50年連れ添うてますから

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爽やかな5月。小学生の頃から風邪を引いては来院されるある患者さん、今はもう大学生ですがその方がとなりの市に住むおばあちゃんを連れてやって来られました。

最近、おばあちゃん、どうも耳が遠くなったようで、僕らの言うてること、知らん顔してますねん。

おばあちゃんの年齢78歳。よくあることです。

でも本人は、聞こえてる、言い張りまして、なかなか診てもらいに行こと言うてもいらん言うて、、、今日やっと僕が行くついでに連れてきました。

それも、よくある。

聴力検査して、

あなたのお耳は、○印と×印がこの赤い線より下回ってますから、年齢とともに聞こえにくくなってるようですよ。どなたもだいたい同じ傾向なんですけどね。

と、かなり、やんわりと説明しても、

私は聞こえてました!ちゃんとボタン押しました!

とおっしゃる方々がいらっしゃる。

それは、○○さんが聴こえた音に反応されて押されたのであって、検査ではもっと小さな音から聴かせているのですが、その音には反応されないのですよ!

というようなシーンが耳鼻咽喉科の日常診療では日常茶飯であります。

さて、

お孫さんである大学生くんはおばあちゃんが聴力検査に入っている間に、あたしにヒソヒソ声でたずねました。

聴こえにくくなるとボケてきますか?なんか最近キレやすいんです。

いやあ、難聴だからいわゆる認知症になるということはないですが、聴こえにくいから応答がトンチンカンになり、ご自分もイライラされてるのではないかしら。

検査の結果、このおばあちゃんもかなり聴こえがお悪い。やはり、補聴器が必要かと、、、

という話を患者さん本人にお孫さんもいっしょにしますと、おじいちゃんも来てますねん、とおじいちゃんを呼んで来られました。

かくかくしかじか。

孫のほうはすっかりその気で、ほら、やっぱり!補聴器買ったほうがいいって!と言ってます。

すると、このおじいちゃん。

わしら50年連れ添うてますから、モノ言わんでもだいたい何言いたいかわかりますねん。

おふたりの生活ならこの程度の聴力でもなんら支障はないそうで、あたしと大学生くんは顔を見合わせてしまったのでした。

年輪の妙技です。