久世光彦という錬言術師。

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なんだ、これは?

青山通りの喫茶店に久世光彦と向田邦子がいる、その姿がコマ送りで自分の目ではっきりと見えるのだ。

第一話の第一節を読む。それはただ、喫茶店で久世光彦が向田邦子を待つだけの描写で感動を呼び起こす場面でもないのに、泣けてくる。そこ、泣くとこちゃうやろ!と独り言。

久世光彦の文章はあたしの中では数々のブンゴウを押しのけてトップだと思っていました。

先日、ここでもちょっと書きましたが、黒柳徹子さんの「トットひとり」に触発されて向田邦子さんに関連するものを読み直してみたい、と思っているところでした。するとこの本が自分の前にすっと現れたのです。親友と本屋で待ち合わせという素敵なシチュエーションで。

久しぶりの久世光彦さん。ドラマを作る人だから、なのか、それにしてもこのモノクロームの艶やかなことよ。白い雨、ベージュのスカート、色彩は豊かなのに、自分の目に浮かぶ画像はモノクロ。

久世光彦、やっぱりいいなあ。

言葉の錬金術。

 
第一話第一節で涙してる場合ではない。

この錬言術師が詰め込んだ言葉の宝石箱をいくつ開けることができるのでしょう。